交通事故(人身事故)を起こした場合の3つの責任
交通事故を誤って起こしてしまい、相手の方を怪我させてしまった場合には、民事・刑事・行政について3つの方面から責任が生じます。
このコラムでは、その3つの責任について説明していきます。
交通事故(人身事故)を起こしてしまった方はもちろん、交通事故被害者で、加害者側にどのような責任追及をできるのか疑問だという方もぜひお読みください。
1.民事責任―損害賠償
交通事故(人身事故)により相手に怪我させてしまった場合、相手方の治療費や慰謝料、休業損害(事故の受傷により仕事を休んだ場合の補償)の他、後遺障害が残った場合には後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害を賠償する責任が生じます。
その支払うべき損害賠償金額は、事故様態や被害者の怪我の程度等により異なりますが、高額となる場合も少なくありません。
そのため、ほとんどの方が任意保険に加入し、このような事態となっても対処できるようにしていらっしゃると思います。
実際にも、(その加入されている任意保険での補償範囲がどの程度かにもよりますが)通常はその任意保険でカバーできる場合が多いでしょう。
損害賠償金額の決定に関する交渉は、加害者側の任意保険会社が行います。よって、過失ゼロの被害者の方の場合、相手方の任意保険会社と交渉を行うことになるでしょう(被害者の過失がゼロの場合、被害者側の保険会社は代理の交渉をしてくれません)。
しかし、保険会社は示談交渉のプロです。事故で怪我をした状態のまま、加害者側の保険会社とやり取りをするのは大きな心労となるでしょう。
もし、相手方保険会社とのやりとりに不満がある方、納得がいかないことがある方は、一度弁護士に相談をすることをお勧めします。
[参考記事]
柏市の交通事故と相手側の保険会社に示談で負けない方法
2.刑事責任―自動車運転処罰法
人身事故に関して、平成26年までは刑法典の中に規定されていましたが、同年から「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)」という特別法が新たに作られ、施行されました。
刑法時代からも、交通事故(人身事故)を起こした自動車の運転者には、刑罰が科されることとなっていましたが、このように特別法が作られることにより、重大事故を起こした自動車運転者に対して、更に重い責任を問うことができるようになりました。
(1) 自動車過失運転致死傷罪
7年以下の懲役(禁錮)or 100万円以下の罰金
自動車運転処罰法第5条は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁固又は百万円以下の罰金に処する」と規定されています。
そのため、人身事故を起こした場合、当該規定に基づき、警察が捜査を行い、検察官が起訴することが考えられます。
もっとも、運転者の過失の程度や被害者の傷害の程度によっては、警察の捜査だけで終わったり、検察官送致されたとしても不起訴処分とされたりすることも少なくありません。
しかしながら、検察官が起訴をした場合、罰金刑の略式起訴となることもあれば、重大事故の場合には公開の法廷で裁かれる公判請求(通常の起訴)となるかもしれません。
(2) 危険運転致死傷罪
15年以下の懲役(死亡の場合は1年以上の懲役)
飲酒運転や信号無視など、危険極まりないような運転により人を死傷させた場合は、15年以下の懲役(死亡させた場合は1年以上の懲役)というより重い刑罰が定められています(自動車運転処罰法第2条参照)。
同罪で捜査された場合は、罰金刑の規定がないので、略式起訴されることはありません。つまり、起訴されるときは、必ず公判請求という公開の法廷でなされ、場合によっては裁判員裁判となることもあります。
交通事故の加害者となってしまった場合、どちらの罪に問われるようなケースでも、弁護士に依頼することで被害者との示談交渉を行うことができます。この示談の成否が、検察官の処分を決めるうえで重要な意味を持ちます。
また、起訴されたとしても、示談の成立は罰金額や判決内容などの量刑面でも重要な意味を持ちます。
そのため、特に事故の被害が大きい場合などは、一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
3.行政的な責任―免許停止・免許取消
これは、交通事故を起こしたということで、交通違反の点数が加算されることになります。
その点数は、事故を起こした責任の程度や被害者の方の被害の程度等により変わってきますが、重い場合には1回の事故で免許取消処分となることもあります。
また、免許取消まではいかなくても、免許停止処分となることもあるかもしれません。
このように、交通違反という側面から、所持している自動車運転免許に影響が出てくることになります。
このような免許取消処分などは、行政処分ですので、その処分に納得がいかない場合は、取消訴訟という行政訴訟を提起して争わなければなりません。
4.まとめ
このように交通事故(人身事故)を起こしてしまった場合、加害者は損害賠償責任(民事)、自動車運転過失致死傷罪・危険運転致死傷罪(刑事)、免許停止処分・免許取消処分(行政)といった3つの方面から責任を問われることになります。
交通事故を起こしてしまったのならば、自分の過ちをしっかりと反省をした上で、必要以上の不利益を受けないように一度弁護士へ相談することをお勧めします。
また、交通事故の被害者の方の中には、「加害者の態度に納得がいかない」「相手方の保険会社が提示してきた賠償金額が低すぎる」などのお悩み・不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
このような場合も、一度弁護士へご相談ください。
[参考記事]
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