自己破産をすると今住んでいる家はどうなる?
借金の支払いができなくなったとき、債務整理をすることで法律的に借金を整理することができます。
債務整理にはいくつか種類がありますが、失業や病気などで収入が途絶えてしまった場合は、自己破産が第一の選択肢となるでしょう。
しかし、自宅(マイホーム)をお持ちの方の場合、自己破産で最も気になるのは「このまま家に住めるのか?」ということだと思います。
自己破産により、マイホームはどうなってしまうのでしょうか?
このコラムの目次
1.自己破産の効果
「自己破産」は、債務整理の中でも最終手段ともいうべき手続きで、メリットもデメリットも大きい制度です。
(1) 借金の全額免除
自己破産の最大のメリットは、借金がゼロになることです。自己破産以外の手続きは全額免除とはなりません。
自己破産が認められれば、以後は税金の滞納等を除き一切の返済をする必要がないので、心機一転、生活を一から再建していくことが可能です。
(2) 財産の処分
その代わりに、自己破産をすると大きな財産を処分しなければなりません。
自己破産以外の手続きには財産の没収はないので、借金全額免除の代償は計り知れないものがあります。
ただし、全ての財産が処分されるわけではありません。
自己破産には「差し押さえ禁止財産」があり、生活に必要な身の回り品は差し押さえが禁止されています。
これに該当するのは、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、PCを始めとする生活必需品の家具、家電です。こうしたものはほぼ手元に残せるでしょう。
また、自己破産後の当面の生活費として、99万円までの現金も手元に残すことができます。よって、自己破産で財産を没収されたとしても一文なしになるわけではないので、そこは安心できる点です。
なお、自己破産開始決定後に得た財産については「新得財産」とされ、こちらについても手放す必要はありません。
一方、20万円以上の資産価値のある財産は原則として換価処分されます。
一般的な家庭における換価可能な大きい財産といえば車や家などが該当するでしょう。
特に自宅は、原則なくなるとみておくべきです。およそ買い手がつきそうもない売却不可能な物件でない限り、換価されて債権者に配当されます。
2.家の処分を免れる方法
では、「借金を返す当てはないけれど、家を手放すこともしたくない」という場合は、どうするべきなのでしょうか?
(1) 個人再生を選択する
自宅を残しつつ借金を整理するには、自己破産以外の手段をとる必要があります。
債務整理には主に自己破産、個人再生、任意整理の3種類があり、自己破産の次に借金額の減額幅が大きいのは個人再生です。
個人再生は、「住宅ローン特則」の要件を満たせば、自宅を手放すことなく借金額をおよそ5分の1程度まで圧縮できる可能性がある制度ですので、マイホームを持っている方にはおすすめです。
しかし、借金減額後の残債は再生計画に沿って原則3年で完済しなければならないので、安定的な収入がなければ認められません。
失業や病気などで収入源が絶たれてしまった場合は、別の方法をとる必要があります。
(2) リースバックを検討する
「リースバック」を利用する方法もあります。リースバックとは、住宅ローンの支払いができなくなった自宅を不動産会社に買い取ってもらい、不動産会社に対して家賃を払うことで自宅に住み続ける方法です。
買取金額を住宅ローンの支払いに充てることで自宅の抵当権を外すことができるので、マイホームを競売にかけられるのを免れることができます。
この制度を利用すれば、自己破産をしても自宅に住み続けることができるので、自宅を手放したくない人にとっては魅力的な制度です。
しかし、不動産業者は利益を出すことを目的としているため、賃貸料は相場に比べて高額になりがちです。
また、リースバックはその名の通り将来的に再び買取ることを前提としています。大抵は定期借家契約となっており、2~5年後に買い戻すという条項が入っているケースが多く、期限になったら買い戻すためのお金を用意する必要があります。
しかし、自己破産後は一定期間借り入れができなくなるので、資金準備ができずに結局自宅を手放す人も少なくありません。
それ故、リースバックは、自己破産で借金がなくなれば支払いに余裕ができる人、一時的な失業や病気で収入が途絶えているだけで、将来的は収入が回復する人見込みがある人、子供の通学などで一定期間住めれば良い人におすすめの制度です。
また、必要以上にリースバックを勧める業者にも要注意です。実際に交渉をする前に、必ず弁護士と相談してから手続きを進めるようにして下さい。
(3) 高齢者ならリバースモーゲージも利用可
高齢者で持ち家がある場合は「リバースモーゲージ」制度の利用も検討してみましょう。
リバースモーゲージは、自宅を担保に入れて融資を受ける制度で、存命中は利息だけ払い、死亡時に銀行は不動産を売却することで元本を回収します。貸付資金の用途は問わないので借金返済に充てることは可能です。
家を子供に残す必要がなく死後に不動産を処分されても誰も困らない状況であれば、この制度で資金を作り借金の返済に充てれば自己破産をせずに済みますし、自宅には引き続き住むことができます。
ただし、リバースモーゲージでは担保評価額と同等の金額の融資を受けるのは難しく、大抵は評価額の50~80%程度となるでしょう。よって、この方法が使えるかどうかは借金総額と融資額次第です。
3.任意売却のすすめ
最後に、もし「自己破産を免れるなら自宅を手放しても良い」、という場合は任意売却をするという方法もあります。
任意売却とは、住宅ローンの返済ができなくなり、売却をしてもなお住宅ローンが残ってしまう場合に、金融機関の同意を得て売却をする制度です。
基本的に、住宅ローンの延滞が重なると、残債を一括返済しなければなりません。
しかし、分割で払えないものを一括で払える人はまずいませんので、返済できない時点で金融機関の抵当権がついている住宅は強制的に売却=競売にかけられます。
しかし、一般的に競売は売却価格が低くなりがちで、裁判所に競売の申し立てをするにも80~100万円程度の経費がかかります。
そもそも買い手も見つかりにくく、売却が完了するまでに時間もかかるので、金融機関としてもそれなりにデメリットを抱えることになります。
そうしたデメリットを避けるために、住宅ローンの延滞が出た時点で任意売却を進め、債務者に任意で住宅を売却してもらって残債の分割払いを認めることで債権を回収できるようにしている金融機関もあります。
任意売却は、収入や資産状況によっては残債を圧縮してもらえる可能性もあり、圧縮がなかったとしても無理なく支払いができる金額を設定するので、債務者にとってもメリットの大きい制度です。
この制度を利用すれば、止むを得ず家を手放すにしても破産を免れることができる可能性があります。
4.家を残したい場合の債務整理も弁護士へ相談を
自己破産をすると借金は全て免除されますが、その代わりに財産は処分されます。
日用品については手元に残せますが、家や車など資産価値の高い財産は換価され、債権者に平等に配当されます。
どうしても自宅を残したい場合は、上記のような手段を検討することになるでしょう。借金の整理をしつつ自宅を守る方法、競売を避ける方法は何通りかあります。
借金の支払いができない=自己破産=自宅没収と悲観するのは早計です。
大事なことは、できるだけ早めに専門家に相談をすることです。
借金問題は対処が早いほど解決の選択肢が広がります。より良い解決に導くためにも、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
泉総合法律事務所柏支店は、自己破産や任意売却に関する経験が豊富にございます。借金に関する相談は無料で行っておりますので、費用の心配をせずにお気軽にご相談下さい。
自宅を守れるか否かは人生の一大事です。専門家と一緒に問題解決をしていきましょう。
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