人身事故の示談交渉は弁護士に依頼!慰謝料額が増額する理由
千葉県は、交通事故の発生件数で毎年上位に位置する県です。
泉総合法律事務所柏支店のある柏市は、千葉県の中では比較的交通事故の多い地域として知られ、平均すれば1日3件以上の交通事故が発生しています。
交通事故の多くは、物損被害のみの軽微な事故ですが、中には、大けがや死亡事故に繋がる重大事故もないわけではありません。柏市が公表している情報によれば、平成28年中の柏市内での交通事故死亡者は10人です。
交通事故が起きたときには、相手方の保険会社と示談交渉をして損害賠償額が確定されるのが一般的です。
しかし、保険会社から提示される損害賠償額に不満を感じている方は少なくないようです。実際、泉総合法律事務所にもそのような相談が多数よせられます。
人身事故の示談交渉で提示された損害賠償額に不満があるときには、弁護士に依頼すれば損害賠償額を増額できる可能性があります。
今回は、弁護士に依頼すると人身事故の損害賠償額が増額する理由について解説します。
このコラムの目次
1.「人身事故の示談」は弁護士に依頼すべき
わずかな通院治療で足りるような軽傷事故の場合を除いては、人身事故の示談交渉は弁護士に依頼した方が良い場合が少なくありません。
人身事故の場合には、弁護士に依頼するだけで受け取ることができる損害賠償額が大幅にあがることが期待できるからです。
2.人身事故で補償される損害の内容
わが国の損害賠償制度は「原状回復」を目的としています。つまり、損害が発生する前の状況に戻すのが損害賠償の目的というわけです。
しかし、負ってしまった怪我が全くなかったようにすることも、死んでしまった人を蘇らせることもできないので、実際には、損害によって生じた経済的な損失を金銭賠償で補填することになります。
実際に支払われる損害賠償の金額は、交通事故によって生じたさまざまな経済的な負担・損失の費目の総額で決定されます。
(1) 治療費などは実費が補償される
人身事故は人の死傷を伴う事故なので、被害者には、ケガの治療に伴う費用負担が発生します。
具体的には、治療費(診療費・投薬費)、通院のための交通費、入院したときにはベッド代、雑費といった金銭的な負担が生じます。
これらの損害に対しては、実費が補填されることで、損害が補償されます。
ただし、実費といっても不相当に高額な出費まで補償の対象とすることは公平の見地から許されません。
したがって、入通院のための交通費は、公共交通機関の運賃、入院ベッド代は大部屋の料金となるのが原則です(治療のために特に必要があるときは除きます)。
(2) 慰謝料額は通院・入院期間、後遺障害の程度に応じて金額が決まる
ケガをしたときには、ケガのないときに比べ、精神的な負担も増加します。また、家族を交通事故で亡くしたときにも大きな精神的負担が生じます。
慰謝料は、これらの精神的工夫を補償するための仕組みです。
慰謝料というと「償いとしての賠償(迷惑料)」といったイメージを持つ人が少なくないのですが、民法でいう慰謝料とは「精神的苦痛に対する補償」を意味しています。
負傷事故の場合の慰謝料は、入通院の期間(入通院慰謝料)、後遺障害の程度(後遺障害慰謝料)に応じて金額が決められます。
また、ケガによって就労が困難となった場合や、死亡事故の場合には、将来の収入が減少してしまいます。この場合には、減収分に相当する金額が「逸失利益」として補償されます。
3.慰謝料の3つの算出基準
交通事故の損害賠償のうち実費負担が補償される費目については、誰が示談交渉をしても金額が変わらないことの方が多いです。実費なので支払われるべき金額が明確だからです。
したがって、修理代の補償が損害賠償となる物損事故では、過失割合の認定が変わることで損害賠償額が大幅に変わる場合を除けば、弁護士に依頼しても費用倒れになってしまうことが少なくありません。
これに対して、慰謝料が発生する人身事故の場合には、示談交渉を弁護士に依頼するかどうかで、損害賠償額が大きく違うことが一般的です。それは、慰謝料を算定するための基準が複数あることが理由です。
慰謝料額を算出する基準には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「裁判基準(弁護士基準)」の3つがあります。
(1) 相手方が提示する慰謝料額は、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」で算出される
示談交渉で相手方の保険会社が提示する慰謝料額は、自賠責保険基準、もしくは任意保険基準によって算出された金額です。
自賠責基準は、自賠責保険から損害賠償が支払われるときの算出基準で、政令などによって詳細が決められています。
自賠責保険は、最低限の補償を確保するための公的仕組みですから、算出される金額は3つの基準の中で最も低額です。
任意保険基準は、任意保険会社がそれぞれ定めている算出基準です。詳細は非公開ですが、自賠責保険基準に多少上乗せした金額であると言われています。
自賠責保険基準による入通院慰謝料は、4,300円×通院期間(もしくは通院日数×2)で算出された金額となります。
(2) 弁護士に依頼すれば「裁判基準」での示談交渉が行える
「裁判基準」は、民事訴訟で交通事故の損害賠償額を請求した際に、裁判所が損害賠償額の算出に用いる基準です。
3つの算出基準のうち最も高額な金額が算出されますが、弁護士に依頼していない示談交渉で相手方保険会社が依拠することはほとんどありません。
示談交渉を弁護士に依頼することで、「納得してもらえなければ訴訟に発展する」というプレッシャーが相手方保険会社にかかることで、はじめて裁判基準をベースにした示談交渉が可能となるからです。
裁判基準における入通院慰謝料は、通院期間と入院期間に応じた金額となります。
交通事故に関する訴訟は膨大な数の蓄積があるため、その結果をまとめたものが専門家向けの書籍として販売されています(いわゆる「赤い本」、「青い本」)。実務では、これらの書籍にまとめられた金額をベースに慰謝料額の交渉をします。
(3) 自賠責基準と裁判基準の金額の違いを具体例で比較
実際に、自賠責基準と裁判基準で入通院慰謝料がどれくらい違うのかを具体例で確認してみましょう。
ここでは、交通事故によって骨折し、6ヶ月通院(入院なし・月10日の通院)したケースで、自賠責保険基準・裁判基準での入通院慰謝料を計算してみます。
その結果をまとめたものが下のグラフです。
上のグラフをみれば一目瞭然ですが、明らかに裁判基準での入通院慰謝料の方が高額となります。
通院期間が3ヶ月を超えると、自賠責保険基準と裁判基準では、もらえる入通院慰謝料の金額が50万円以上も違います。
4.後遺障害が残ったとき
後遺障害が残ったときには、弁護士に依頼することで適正な等級認定を受けられる
医師による治療が終了してもケガによる症状が残ってしまったときには、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害によって生じる将来の精神的苦痛を一括で補償するものであるので、入通院慰謝料よりも高額になります。
しかし、弁護士に依頼せずに示談交渉を進めたときには、後遺障害慰謝料の額が低くなったり、慰謝料をもらえなかったりすることもあります。
(1) 弁護士に依頼しなければ適正な等級認定を受けられない可能性もある
後遺障害慰謝料の金額は、認定された「後遺障害等級」に応じて算出されます。
後遺障害等級の認定は、診断書や診療報酬明細書(診療記録)、レントゲン写真などの資料による書面審査で行われます。
認定に必要な資料は、相手方の保険会社に収集・提出を任せる方法(事前認定)と、被害者自ら収集・提出する方法(被害者請求)があります。弁護士に依頼していない示談交渉の場合には、事前認定でなされることが一般的です。
しかし、後遺障害の有無やその症状について、被害者と相手方保険会社との間に認識の違いがあるときには、事前認定は被害者にとって不利になることが少なくありません。
相手方の保険会社とは利害が対立しているので、必ずしも十分な資料を収集・提出してもらえる保証がないからです。
特に、レントゲンなどの画像では診断のつかないむち打ち症の場合に事前認定をすると認定結果が「非該当」となる可能性が高くなります。
「非該当」は「後遺障害がない」という認定結果であるので、この場合には、自覚症状があったとしても慰謝料を受け取ることができません。
しかし、被害者請求は、後遺症について専門知識をもたない被害者本人にとっては簡単な手続きではありません。
特に、認定結果によって等級が変わる微妙な案件では、後遺障害認定等級の実務に精通した弁護士に依頼してこそ適正な等級認定が得られるといえるでしょう。
(2) 後遺障害慰謝料の算出基準による金額の違い
後遺障害慰謝料の算出額も、入通院慰謝料と同様に3つの基準によって金額が異なります。
等級 |
自賠責保険基準 |
裁判基準 |
等級 |
自賠責保険基準 |
裁判基準 |
---|---|---|---|---|---|
第1級 |
1,100万円 |
2,800万円 |
第8級 |
324万円 |
830万円 |
第2級 |
958万円 |
2,400万円 |
第9級 |
255万円 |
670万円 |
第3級 |
829万円 |
2,000万円 |
第10級 |
187万円 |
530万円 |
第4級 |
712万円 |
1,700万円 |
第11級 |
135万円 |
400万円 |
第5級 |
599万円 |
1,440万円 |
第12級 |
93万円 |
280万円 |
第6級 |
498万円 |
1,220万円 |
第13級 |
57万円 |
180万円 |
第7級 |
409万円 |
1,030万円 |
第14級 |
32万円 |
110万円 |
(※自賠責保険基準の金額は介護が不要な場合の後遺障害慰謝料の金額)
弁護士に依頼することで後遺障害慰謝料額の交渉は、裁判基準の金額ベースでの交渉となるので、慰謝料の増額が期待できます。
後遺障害が残ったときには、長期間(もしくは一生)その症状を抱えなければなりません。
お金がすべてではありませんが、適正な金額、納得できる金額を受け取れることは、今後の生活のためにもとても大切なことです。
5.柏市での交通事故は泉総合法律事務所柏支店へ
人身事故に遭ってしまったときには、治療や今後の生活のために十分な補償を受け取るべきです。
しかし、交通事故の被害者が示談交渉のプロである保険会社の担当者と対等に交渉することは簡単なことではありません。
また、ケガの治療(遺族の葬式など)と平行して保険会社と示談交渉することは、精神的にも辛いことがあります。
弁護士に依頼いただければ、治療に専念できるだけでなく、適正な補償を確保することができます。
交通事故の示談交渉でお困りのときや、不安なこと、納得できないことが生じたときには、泉総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
泉総合法律事務所の各支店では、交通事故の相談は初回無料ですので、費用の心配もなく安心してご利用いただけます。
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