柏市周辺でクレプトマニア(窃盗症)による万引きで困っている方へ
世の中には、万引きをやめられない人がいます。
当初はお説教や反省文で処罰を免れても、同じことを繰り返せば、罰金刑を受け、執行猶予付きの懲役刑が言い渡され、さらには実刑判決を下されるに至ります。
しかし、服役してもなお万引きが止まらず、刑務所に逆戻りという例も少なくありません。
万引きで得られる経済的利益はたかが知れています。懲役刑を受けた場合に被る不利益に比べれば、取るに足りないことが多いでしょう。
にもかかわらず、すぐに見つかってしまうような万引きを繰り返す人は、単に反省が足りないだけなのでしょうか?
1.クレプトマニア(窃盗症)とは
万引きをすることにより得られる達成感というものを想定しても、ペナルティの重大さを考えれば、合理的な考えができる人は、他の手段で達成感を得ようとするか、少なくとも犯行が見つからないように工夫を凝らすでしょう。
しかし、万引きを繰り返す人には、特に知能に問題のない人でも、そのような形跡が見当たらないことが多いのです。
こうした明らかに割に合わない万引き等の窃盗を繰り返してしまう状態について、近年は国際的な診断基準もでき、精神的な疾病として認知されるようになっています。
これを、「窃盗症」「病的窃盗」「クレプトマニア」と称します。
(1) クレプトマニアの原因
診断基準については別項に譲りますが、クレプトマニアによる万引きは、それにより得られる経済的利益や達成感等を考慮しても、明らかに引き合わないような状況でも繰り返されます。
執行猶予中であったり、近日中に試験や結婚式などの重要なイベントが予定されていたり、守るべき家族がいたりしてもおかまいなしなのです。
損得勘定や規範意識など、万引きに対する歯止めとなるような作用が働かなくなっていることがその一因と考えられています。
同様の病態が見られる摂食障害や、薬物等への依存症と同時に発症している方が多い傾向にありますが、これらを伴わず、他の原因があるとみられる例も多々あります。
(2) クレプトマニアの治療方法
クレプトマニアの種別としては、軽度の認知症のような脳神経の異常に起因するものと、依存症等の精神的疾病の延長上にあるものが知られていますが、治療方法については研究途上で、日本国内では10箇所程度のわずかな医療施設が各自の方法による治療の門戸を開いているに過ぎません。
治療方法としては、カウンセリングやグループワーク(同種の症状に苦しむ人達が経験を共有する場)を中心とする、従来他の精神的疾病に対して用いられてきた方法に改善を加えたものと、反復訓練により窃盗の欲求を制御する作用を強化する新たに開発された方法が知られ、これらを並行して提供している医療機関も存在します。
治療にかかる時間は、入院して集中的に施療する場合2か月から半年程度を要しますが、通院治療を受け入れている医療機関もあり、その中には勤め人でも治療ができるよう、週一回から患者を受け入れているところもあります。
しかし、一定程度の治療効果を挙げるためには、相応の治療時間が累積しなければなりませんので、通院でも一日十時間程度のプログラムに臨む患者さんもいらっしゃいます。
2.クレプトマニアの刑事罰
刑事手続との関係では、クレプトマニアは目下ようやく認知・評価が始まったばかりの段階にあります。
捜査機関の中では、クレプトマニアと称するのは刑罰を免れるための方便であるとか、罪責を直視できないがゆえの責任回避、現実逃避であるとか見做す向きも強いようです。
不合理な窃盗を繰り返してしまう人が再発防止のために自ら努力し、それを正当に評価してもらうためには、適切な医療機関や医師にかかると同時に、その意義と効果を適切に裁判所に伝えられる弁護人に活動してもらうことが必須でしょう。
クレプトマニアに起因する万引きであると認められた場合でも、判決に及ぼす影響は様々なものが考えられます。
物を欲しいという欲求(それ自体は自然なもので何ら責められるものではないのですが)を抑止する能力、精神作用が全く失われていたということであれば、そもそも盗みをしてはいけないという規範を「破った」ことにならない以上犯罪にはならないとの結論が導かれますが、現状裁判所がそこまで踏み込んで評価することは稀です。
多くの場合では、治療効果があり刑罰を科す必要性が下がったとか、少なくとも懸命に治療に励み再発防止の意思が固いとか評価されることにより、もともと想定された刑よりも軽い処罰にとどまったという限度で(本人にとって)良い影響が生じることになります。
実刑確実と思われたところ再度の執行猶予が与えられたとか、罰金刑で済んだという例が年々報告されています。
3.クレプトマニアの万引きの対策
仮にご自身や、身内の方がこのような不合理に繰り返される万引きに苦しんでいらっしゃる場合には、なるべく早く専門の医療機関に赴き、ご相談になるのがよろしいでしょう。
そして、治療により改善が見込めることが分かった場合には、その医療機関の提供するプログラムについて十分に理解し、家族にも周知して、確固とした決意で治療に取り組むべきでしょう。
医師との信頼関係が構築できなければ治療はうまくいきませんし、一通りの治療が終わった後でも相当期間の経過観察をし、定期的なケアを行わなければ、再発の恐れは免れません。
クレプトマニアの治療には時間がかかりますが、捜査機関や裁判所が治療の終了までのんびり待っていてくれる保証はありません。逮捕されてから治療を始めたのでは手遅れになる恐れが否めません。
万引きを繰り返してしまう方は、できるだけ早く、反省だけではどうにもならない場合があることに気付き、しかるべき助けの手を求めるのが望ましいです。
クレプトマニアであるとの診断を受けること自体にも、一定期間の時間を要することがあります。
また、近隣に適切な医療機関がないとか、新規患者を受け入れる余裕がないといったケースもあります。
そのような場合には、KA(匿名窃盗症患者の団体)と呼ばれる、各地に存在する自助グループへの参加を経て、取りうる対策を検討することも一つの選択肢です。
とはいえ、専門的知識を有する指導者の元での診断・治療の代わりになるものではありませんから、(本当に治療が必要な人にとっては)あくまで繋ぎ、もしくは補助として考えるのが無難でしょう。
泉総合法律事務所柏支店では、クレプトマニアの診断を受けた方の弁護・治療に多数の経験がある弁護士が、同種の万引き常習事案についての相談を承っております。
初回のご相談は無料となっておりますので、是非一度専任の弁護士にご相談ください。
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