刑事事件

強制わいせつ罪における刑法改正のポイントとは?

刑法が改正され、性犯罪の厳罰化が叫ばれています。

では、刑法改正後の今、強制わいせつ罪を犯してしまった場合、従前よりも厳罰に処せられるのでしょうか。

どのような刑罰になるのか、前科がつくのか、今後の生活はどうなってしまうのかなど、強制わいせつ罪で逮捕された被疑者の家族の不安や心配は尽きません。

以下においては、刑法の主要な改正点の他、性犯罪の厳罰化は強制わいせつ罪の逮捕勾留や起訴・判決にどのような影響を与えるかなどを解説します。

1.刑法の主要な改正点

改正刑法は、平成29年7月13日に施行されました。
主要な改正点は、次のとおりです。

  • 強姦罪(177条)、準強姦罪(178条2項)の罪名、構成要件及び法定刑の改正
  • 集団強姦等罪(178条の2)等の廃止
  • 監護者わいせつ罪及び監護者強制性交等罪の新設
  • 強姦等致死傷罪(181条2項)の罪名及び法定刑の改正
  • 強盗強姦罪(241条)の罪名及び構成要件の改正
  • 性犯罪の非親告罪化

こうして見ると、「強制わいせつ罪」については改正されていないことが分かります。

しかし、180条の親告罪規定が削除されたため、強制わいせつ罪を含む性犯罪は全て非親告罪となりました(なお、改正前の事件についても告訴を不要としました)。

2.性犯罪の厳罰化と強制わいせつ罪

刑法改正施行後の統計が少ないため、正確とはいえないとはいえ、平成29年版犯罪白書(平成28年の統計)と平成30年版犯罪白書(平成29年の統計で、上記改正前の「強制わいせつ罪」を含むもの)を比較した場合、以下のようになっています。

 

逮捕率

勾留率

起訴率

平成29年版

66.6%

60.3%

40.1%

平成30年版

63.9%

57.4%

37.8%

以上より、平成28年よりも平成29年の方がいずれの率も少し下がっていることになります。

その要因としては、従来、わいせつ行為とされていた「肛門性交及び口腔性交」が強制性交等罪に含まれることになったことや、起訴猶予率が13.5%から35.5%となっていること(※1)が考えられます。
(※1) 従来の統計では起訴猶予以外の不起訴理由となっていた「親告罪の告訴の欠如・無効・取消し」が、改正後では起訴猶予に含まれることになりました(検察統計年報)。

刑法改正は強制わいせつ罪の罰則に変更を与えるものではなく、訴追要件の変更でしたため、刑法改正による「性犯罪の厳罰化」は、強制わいせつ罪の身柄関係及び起訴・不起訴の処分に限ってはそれほど影響を与えていないようです。

とはいえ、いずれの統計でも、逮捕されれば約9割が勾留されてしまいます。

3.性犯罪の厳罰化と強制わいせつ罪の判決

強制わいせつ罪だけの統計がないため、平成28年の「強姦罪・強制わいせつ罪」と平成29年の「強制性交等罪・強制わいせつ罪」の比較になりますが、執行猶予率は57.1%、56.6%と大差がありません。

また、6月以上3年以下の懲役刑(6月未満の懲役刑はありませんでした)で比較した場合でも、執行猶予率は74.0%、74.7%と大差がないのです。

性犯罪は、全体的に見れば、確かに、刑法改正により厳罰化されているとはいえ、こと強制わいせつ罪に限った場合、法定刑に変更がありませんでしたので、刑法改正は、裁判所の量刑判断にも現状影響を及ぼすに至っていないようです。

とはいえ、強制わいせつ罪は親告罪でなくなりましたので、告訴がなくても、あるいは、告訴が取り下げられたとしても、検察官は起訴することができ、起訴をされると99%有罪となってしまいます。

4.重要なのは示談成立

強制わいせつ罪のような性犯罪では、当然ながら、被害者の意思も尊重される必要があります。

被害者の中には、非親告罪となったことによって、加害者である被疑者を厳正に処罰することを望む一方で、捜査機関からの詳細な事情聴取により精神的負担が増すことを恐れたり、公判廷での証人尋問時に被告人と対面することを恐れたりする方もいます。

よって、被害者が、被疑者の反省と謝罪の気持ちを受け入れて、被疑者と被害者間で示談が成立した場合には、上記のような被害者の負担を強いることにならぬよう、被害者の意思を尊重し、検察官も、裁量権を適切に行使して、被疑者の処分を決断することは現在も望まれています。

よって、強制わいせつ罪を犯した被疑者に対する処分結果に最も影響を与えるのは、変わらず被害者との示談となります。

示談が成立すれば、前科があって起訴は免れないとしても、執行猶予付きの判決が期待できますし、実刑の場合でも、刑期の軽減につながる可能性があります。

したがって、強制わいせつ罪を犯した被疑者に有利となる結果を導くためには、いかに早期に示談を成立させることができるかにかかっているわけです。

確かに、示談が成立した場合でも起訴される可能性はありますが、前科があればともかく、早期に示談が成立したのならば、不起訴の可能性は高くなるでしょう。

5.示談交渉は弁護士に依頼

(1) 被害者との示談は弁護士のみが可能

強制わいせつ罪のような性犯罪事件の場合、警察などの捜査機関が加害者である被疑者に被害者の連絡先や氏名を教えてくれることは絶対にありません。弁護士にのみ被害者の了解を得て教える仕組みとなっています。

すなわち、弁護士は、警察や検察官を通じて、被疑者の反省や謝罪の気持ちを被害者(被害者が未成年の場合はその保護者)に伝えることで、被害者側が「弁護士にだけなら」という条件付きで連絡先や氏名を開示してくれます(もっとも、弁護士に連絡先を教えていただけない被害者側も少なからずいます)。

その開示が得られれば、被害者に連絡して、示談交渉を進めることが可能になります。

(2) 被害者の心情に配慮して交渉

示談交渉となりますと、被害者の心情に配慮しなければなりませんので、かなり高度な交渉ごとになります。

被疑者の家族が被害者側との示談に当たることも可能ですが、そうした場合、かえって被害者側の心情を害してしまい、逆効果を招きかねません。

被害者側との折衝、そして示談交渉などは、法律のプロである弁護士に委ねるべきです。

示談交渉では、被疑者の真摯な反省と誠意ある謝罪の気持ちを被害者側に受け入れてもらう必要があります。
これらを受け入れてもらえれば、被害者側との示談の成立、そして被害者側の処罰感情の緩和の可能性が高くなり、場合によっては、嘆願書まで作成してもらえるかもしれません。

示談が早ければ早いほど、強制わいせつ罪を犯した被疑者に有利な処分結果が出ることが期待できますので、もし逮捕された場合には、逮捕された直後の早い段階で、弁護士に依頼することが望ましいことになります。

性犯罪に対する社会一般の評価から、強制わいせつ罪についても厳しい非難は免れませんが、弁護士に依頼した上でしっかりと反省の意を示せば、示談が成立し、被疑者に有利な処分がなされる可能性があります。

6.まとめ

泉総合法律事務所は、刑事弁護の経験が豊富で、性犯罪事件の実績も多数あります。

強制わいせつ罪を犯してしまった、逮捕されてしまったという被疑者の家族の方は、当事務所に是非ご依頼ください。

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